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カテゴリ:タバコラム( 118 )
タバコラム119. 禁煙の日にひとこと(101)~加熱式タバコは紙巻タバコよりも安全なの?~

 タバコラム119. 禁煙の日にひとこと(101)
  ~加熱式タバコは紙巻タバコよりも安全なの?~


 最近、アイコスやグロー等の加熱式タバコを吸っている人を目にすることが多くなったと感じませんか?

タバコラム119. 禁煙の日にひとこと(101)~加熱式タバコは紙巻タバコよりも安全なの?~_d0128520_11095986.jpg

 実際、平成30年度412月期における紙巻タバコと加熱式タバコの販売に占める加熱式タバコのシェアは、なんと約21%と喫煙者の5人に1人を占めるまで増えています1)
 その割合は年々増加しており、紙巻タバコよりも加熱式タバコの方が人気になる日も近いかもしれません。

 紙巻タバコと違って加熱式タバコは煙も出ず、臭いも少なく、紙巻タバコよりも一見安全で健康に良さそうに見えますが、本当にそうなのでしょうか?


 従来の紙巻タバコに対して火を使わないスモークレスなタバコとして、電子タバコと加熱式タバコがあり、それらを吸う行為のことをベイピングと呼びます。

 電子タバコとはタバコ葉を用いずニコチンを含んだ液体を加熱し蒸気を吸うものであり、日本では医療品として扱われているため
薬事法で国内で販売や譲渡は禁止されています(個人使用目的の一定量以下の輸入は可能)2)

 一方、加熱式タバコはタバコ葉を加熱しニコチンを含んだエアロゾル(液体や固体の微粒子)を発生させ吸引するもので、新型タバコとして日本で広く普及しています。

 これら加熱式タバコ等の新型タバコは、「煙が出ない、あるいは煙が見えにくいので禁煙のエリアでも吸える」、「受動喫煙の危険がない」、「従来の紙巻タバコより健康リスクが少ない」と認識され、年々急速な広がりをみせていま
3)
 また、加熱式タバコを販売する各社も紙巻タバコよりも有害物質が少ないと宣伝しており、実際タバコ特異的ニトロソアミンの尿中代謝物は紙巻タバコ使用者の1.54.2%、揮発性有害物質の代謝物は2060%程度と少ないと報告されていま4)

しかし、健康という側面から見て、加熱式タバコは本当に安全だと言えるのでしょうか?


 加熱式タバコや電子タバコは、紙巻タバコをやめられない人、あるいはやめる意志のない人にとっては健康被害の低減につながるとして、従来の紙巻タバコ使用者は代替品として使用することを推奨する考え方があります。
 しかし、これらの新型タバコの使用と病気や死亡リスクとの関連性についての科学的証拠が得られるまでにはかなりの時間を要すため、現時点では明らかでなく推測にすぎませ
3)

 加熱式タバコの主流煙中に紙巻タバコとほぼ同レベルのニコチンや揮発性化合物(アクロレイン、ホルムアルデヒド)、約3倍のアセナフテン(多芳香環炭化水素物)等の有害物質が含まれていることが報告されていま
5)

 また、加熱によりエアロゾルを発生させる仕組みは、ニコチン以外の液体成分を分解して複雑な混合物を発生させ、発癌性物質に変化することが指摘されてい
ます6)

 さらに、加熱式タバコは周囲の人々への受動喫煙の危険も示唆されています。
 「煙が出ない、あるいは煙が見えにくい」とされていますが、特殊なレーザー光を非燃焼・加熱式タバコ使用者の呼気に照射すると、大量のエアロゾルを呼出していることが明白になり
ます3)

 世界保健機構がレビューした複数の研究では、
 1)電子タバコ使用者の呼出煙中のニッケルやクロムなどの重金属濃度は紙巻タバコの呼出煙よりも高い、
 2)PM2.5、ニコチン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドなどの濃度は紙巻タバコの呼出煙中より低いが、通常の大気中濃度の1440倍(PM2.5)、10115倍(ニコチン)、28倍(アセトアルデヒド)
1.2倍(ホルムアルデヒド)、
 とされています。

 有意な健康リスクではないとの主張もありますが、見えにくいエアロゾル中には通常の大気中濃度を上回る有害物質があるわけですから、受動喫煙者の健康を脅かす可能性があると考えることが合理的であると言え
ます7)

 また、最近加熱式タバコや電子タバコ特有の病気も出現しています。
 重度の肺損傷や全身および消化器症状と関連する新たな疾患であり、電子タバコまたはベイピング関連肺損傷(lung injury associated with e-cigarettes or vapingEVALI)と呼ばれま8)

 重症度は多岐にわたり、多くが抗菌薬やステロイドで治療されていますが、臨床的に改善しても異常が残存する患者が多いと言われています。この病気が一因となり死亡した症例も報告されており、まだその病態について広く知られてはいませんが、加熱式タバコが普及するにつれてEVALIによる健康問題が顕著となってくるかもしれません9)

 加熱式タバコは従来の紙巻タバコに比べてタール(タバコ煙中の有害物質のうちの粒子成分)が削減されていますが、依存性物質であるニコチンやその他の有害物質を吸引する 製品です。したがって、使用者にとっても、受動喫煙させられる人にとっても、加熱式タバコの使用は推奨できません3)。紙巻タバコにしろ加熱式タバコにしろ、積極的に禁煙していくことが健康にとって大切だと考えられます。

    禁煙促進チーム  初期臨床研修医 寺道紘毅


文献

1)財務省「たばこ事業等分科会(平成31425日開催)議事録」

2)https://www.nicinjuice.com/cts/about_law/
3)一般社団法人日本呼吸器学会「非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに対する日本呼吸器学会の見解」
4)欅田尚樹:電子タバコ蒸気に含まれる有害化学成分.厚生労働省委員会報告書http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000066481.pdf
5)Auer R et al:Heat-Not-BurnTobacco Cigarettes: Smoke by Any Other Name.JAMA Intern Med.2017;177:1050-1052.
6)Shahab L et al: Nicotine, Carcinogen,and Toxin Exposure in Long-Term E-Cigarette and Nicotine Replacement TherapyUsers: A Cross-sectional Study. Ann Intern Med 2017; 166:390-400.
7)世界保健機構による報告http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/ DTWHO.pdf
8)https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc1915111
9)DenitzaP Blagev et alClinical presentation, treatment, andshort-term outcomes of lung injury associated with e-cigarettes or vaping: aprospective observational cohort study. Lancet (London, England).2019;394(10214);2073-2083.


by hiro-nishi-mc | 2020-02-19 11:13 | タバコラム
タバコラム118. 禁煙の日にひとこと(100)〜2020年の世界禁煙デースローガンは?〜


 タバコラム118. 禁煙の日にひとこと(100)
  〜2020年の世界禁煙デースローガンは?〜



 2020年の世界禁煙デースローガンがWHOホームページに発表されていると、SNSから知りさっそく見てみました。

 それは、

タバコラム118. 禁煙の日にひとこと(100)〜2020年の世界禁煙デースローガンは?〜_d0128520_15483043.jpg


 “Protecting youth from industry manipulation and preventing themfrom tobacco and nicotine use”です。


私が理解した範囲では、

 「若者をタバコ産業の巧みな誘惑から守り、タバコとニコチン依存から遠ざけよう」


と訳しましたが、皆さんはどう訳されますか?


 世界禁煙デーの531日が近づくと、いつも厚労省の超意訳文が公表されていますが、今年も楽しみです。

 さて、ホームページの本文も少し読んでみますと、タバコ産業はいい香りを加えたり、タバコ製品の形状を良くしたり、清潔感をもたせたりすることで、あたかも有害性やリスクがそれほどつよくない印象を与えて、若者をタバコユーザーに取り込もうとしているとあります。

 新型タバコ(国内では加熱式タバコ、海外ではニコチン入り電子タバコ)は紙巻きタバコと比べれば、タール含量は少なく、煙が出ないので吸う本人も周囲にも害は少ないとして販売戦略が取られています。
 しかし、ニコチン量は両者同程度に含まれ(ニコチンは依存物質であるだけでなく体内でニトロソアミン類の発がん物質に変化します)、喫煙者から周囲に有害物質が吐き出されることで受動喫煙被害はなくなりません。

 さらに新型タバコや電子タバコには加熱する溶液に多くの有害化学物質が含まれていることが明らかにされており、アメリカにおいて電子タバコを使用していた若者が重篤な呼吸障害で死亡したとのニュースがあったことも記憶に新しいところです。

 新型タバコを含むタバコ製品に騙されることなく、私たち、特に若者の健康被害を起こさせないように広く啓発活動をしていく必要があります。

       禁煙促進チーム 立山 義朗


by hiro-nishi-mc | 2020-01-22 15:54 | タバコラム
タバコラム117. 禁煙の日にひとこと(99)〜喫煙の害について自主学習して思ったこと〜


 タバコラム117. 禁煙の日にひとこと(99)
   〜喫煙の害について自主学習して思ったこと〜


 タバコについて何か一つ書いてみませんか?と禁煙促進チームから依頼され、研修医はチームのメンバーでもあり、喫煙の害について知識を再確認し、禁煙の取り組みの重要性を再認識したいと思い、今回書いてみました。
タバコラム117. 禁煙の日にひとこと(99)〜喫煙の害について自主学習して思ったこと〜_d0128520_16384431.jpg

 参考文献としてTHE LUNG perspectives Vol.27 No1 2019冬」(メディカルレビュー社) 特集:喫煙のサイエンスを選びました。
 喫煙の害について様々な観点からの最新の知識と情報について解説されており、喫煙の害の経済的側面や、病理的な実態、また新型タバコの問題などについて知ることができます。内容は、以下の12テーマで構成されています。

1. 喫煙が経済に与える影響
2. 我が国の禁煙活動の実情と課題
3. タバコ対策の重要性-現世代と次世代のために
4. 受動喫煙被害-問題点と将来の課題
5. 喫煙により取り込まれる有害物質と健康リスクアセスメント
6. 新型タバコの有害性と問題点
7. 喫煙による聴力障害-知られざる問題と新知見
8. 喫煙によるDNA変異シグネチャー
9. 喫煙による呼吸障害-COPD発症における喫煙の役割
10. 妊娠中の喫煙が子どもの健康に与える影響
11. 心血管病変と喫煙-注目される新知見
12. 基礎医学とのダイアローグ

 ①加熱式タバコの喫煙バイオマーカー
 ②ニコチン性アセチルコリン受容体(ニコチン受容体)と作用薬

 以上の通り喫煙に関する問題について私たちが知っておくべき情報が集められています。
 日本では来年のオリンピックに向けて新しい法律にもとづいた禁煙の取り組みが強化されており、禁煙の社会的必要性は高まっています。
 喫煙の害についての知識、禁煙の必要性を再認識するための適切な資料だと思います。
 当コラムでは以下の3つのテーマ 
  ①喫煙による害(能動、受動、サードハンド喫煙)
  ②妊娠中の喫煙の害
  ③新型タバコの有害性)

で上記12章の中から要点を紹介したいと思います。


1)喫煙による害
 2007年我国の能動喫煙による死亡は約13万人、受動喫煙による死亡は約1.5万人、合わせて十数万人の死亡が発生しています。喫煙の影響が除去されれば日本人男性の寿命は1.5%伸びると期待されています。喫煙は健康寿命短縮に関連する20疾患の14疾患に関係しています。脳血管疾患、躁鬱病、虚血性心疾患、認知症、難聴、肺癌、糖尿病などがあります。
 受動喫煙はタバコ先端から発生する副流煙(より多くの有害物質を含む)と喫煙者が吐出する呼出煙を非喫煙者が吸引することです。小児の40%、非喫煙者男性の33%、非喫煙者女性の35%が被害を受けています。2014年までの40疫学調査では全死亡は1.18倍、冠状動脈疾患死1.23倍、脳卒中死1.29倍、全癌リスク1.16倍とあり、有意に増加するとされています。
 他に広い意味の受動喫煙としてサードハンド喫煙(Third-hand smoke, THS)があります。これは、喫煙者が使った住宅、車、衣類などに残るタバコ臭に曝露されることを言い、動脈硬化、中枢神経障害などの原因になることが最近分かってきました。喫煙習慣のある家庭のカーテン、カーペットを使ったラット実験から、遺伝子損傷、LDLコレステロール、中性脂肪増加、非アルコール性脂肪性肝炎発症、血糖値増加、インスリン抵抗性憎悪、創傷治癒遅延、多動症発症などが確認されています。また内装、什器(じゅうき)に付着したタバコ成分に経口的、経皮的に曝露される乳幼児でタバコ特異的ニトロソアミンレベルが極めて高いという報告もあります。THS曝露は、乳幼児をはじめとする非喫煙者の健康を損なう可能性が高く、家屋・車内での喫煙は厳禁と考えるべきです。

2)
妊娠中の喫煙の害
 2000年以降、成人女性の喫煙率は低下を続け、2017年では29歳まで:6.3%、39歳まで:8.5%です。妊婦の喫煙率は同様の傾向をたどり2010年時点で5.0%となっています。現時点、妊婦全体の喫煙率:5%、妊娠後禁煙:13%、合わせると依然として高いが、25歳未満の妊婦では全体喫煙率:9%、妊娠後禁煙:23%であり、若年妊婦の喫煙率はさらに高く、対策のターゲットとすべきとしています。 
 また妊娠後の受動喫煙率を見ると、毎日:19.9%、稀:47.6%、合わせて67.5%2/3強)の妊婦が受動喫煙にさらされています。

 妊娠中の自身への健康被害として、睡眠障害、喘息、アトピー皮膚炎 との関連が報告されています。合併症としては、子癇前症(妊娠高血圧症候群, Pregnancy induced hypertension, PIH)、早産、切迫早産、絨毛膜羊膜炎(Chorioamnionitis, CAM)、前期破水(Prematurerupture of the membranes, PROM)などがあります。
 胎児への影響としては、低出生体重児、在胎不当過少児(Small-for-gestational-age, SGA)があります。2000年以降の研究から妊娠中喫煙によりSGAリスクが上昇、出生低体重が85170gの範囲で優位に減少することが示されました。
 また、妊娠前期での喫煙は、3歳時でのBMIを有意に増大(BMI25相当)し、小4時における同様の肥満に関連しています。また3歳時点でのう歯についても有意に関連しています。 以上のように特に妊娠前期での喫煙は本人だけでなく次世代の健康にも大きく影響しています。

3)
新型タバコの有害性

 新型タバコは、液体を加熱してエアロゾルを吸引する電子タバコと、非燃焼加熱タバコに分けられます。
 加熱式タバコは葉タバコを直接加熱し、ニコチンを含むエアロゾルを吸引するタイプ(IQOS, glo)と、低温での霧化する有機溶剤からエアロゾルを発生させタバコ粉末を通過させてタバコ成分を吸引するタイプ(PloomTECH)があります。
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 これらには多くは発がん物質が含まれており虚血性疾患リスクと一日当たり喫煙本数の関係(右図)からわかるように、発症リスクは12本という軽度の喫煙で急激に立ち上がり、その後は本数と線形的に増加します。
 この事実は有害成分の絶対量が少なくても疾患発症率は低減せず、有害性も低減しないことを意味するとしています。

 今回コラムを書きながら、改めて3つのことを思いました。
 1つ目は喫煙は医学的に健康へのリスクがあることを再認識したので、日ごろからタバコ煙を避けながら生活を送る事が重要であること。
 2つ目は現在流行中の加熱式タバコは禁煙の代替手段にならないどころか、むしろ喫煙を助長させ、健康被害を増す可能性もあること。
 そして最後に今回の投稿をきっかけとして私も医療者の一人として、喫煙の害と禁煙の重要性について目の前の患者さんのみならず、広く一般社会に向けて啓発していこうと強く思ったことです。


   禁煙促進チーム  初期臨床研修医 藤田翔平


by hiro-nishi-mc | 2019-12-13 17:16 | タバコラム
タバコラム116. 禁煙の日にひとこと(98)〜受動喫煙防止をピシッと法律で徹底することが心疾患予防につながる!兵庫県からの報告から〜


 タバコラム116. 禁煙の日にひとこと(98)
  〜受動喫煙防止をピシッと法律で徹底することが
    心疾患予防につながる!兵庫県からの報告から〜


 日々の診療で医師は喫煙をしている患者さんに対して、禁煙の指導をして疾病を予防するという事を行っています。 
 タバコをやめたいと思っているのにやめられないという患者さんはニコチン依存症の疑いがあるので、禁煙外来を受診してカウンセリングを受ける事や薬物治療を受ける事が出来ます。
 喫煙は肺がんやCOPDなどの呼吸器疾患、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患など様々な病気のリスクですから、それを禁煙によって取り除いてやるという事は疾病を予防するという医療の重要な役目です。

  • 受動喫煙防止条例について

しかしながら、受動喫煙によって普段タバコを吸っていない方が疾病のリスクに曝されるという事に対して私たちはどうすればよいのでしょうか?受動喫煙を防止する為には医療の範囲を越えた社会的な取り組みが必要です。

20187月に改正健康増進法が可決されました。国や自治体などの行政機関が法律や条例に基づいて、住民を受動喫煙による健康被害から保護する事が大切と思います。

さて今回は、このような受動喫煙を法制化によって防止する事が疾病の予防につながるのであろうか?という事に関しての報告を紹介します。

  • 兵庫県からの報告

兵庫県は神奈川県に次いで、2013年に全国で2番目に受動喫煙防止条例が施行された県です。
 佐藤幸人先生らは、条例の施行前後で兵庫県における急性冠動脈症候群(急性心筋梗塞や不安定狭心症)の発生がどのように変化するかについて調査を行いました。

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結果は、条例の施行前後で兵庫県全体では急性冠動脈症候群の入院患者数は変化しなかった(1)のですが、兵庫県の中でも神戸市に限定して解析を行うと、条例施行の1年後、2年後と明らかに急性冠動脈症候群の入院患者数が経時的に減少しました。 (2,)

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タバコラム116. 禁煙の日にひとこと(98)〜受動喫煙防止をピシッと法律で徹底することが心疾患予防につながる!兵庫県からの報告から〜_d0128520_16322069.jpg
 兵庫県のその他の地域ではみられなかった急性冠動脈症候群の有意な患者数の減少が、神戸市ではみられた理由としては、神戸市は県庁所在地であるため、受動喫煙防止条例の法制化が徹底された為であろうと考察されています。

一方で、神戸市以外の地域では、不安定狭心症による入院が増加傾向を示しました。()

この件に関しては、受動喫煙防止条例が飲食店などでは徹底されなかった為ではないかという考察がされています。(詳しく知りたい方は Circ J 2016;80:2528-2532(図3を参照してみてください。)

タバコラム116. 禁煙の日にひとこと(98)〜受動喫煙防止をピシッと法律で徹底することが心疾患予防につながる!兵庫県からの報告から〜_d0128520_16321211.jpg

受動喫煙防止条例によって心疾患が予防される可能性が示されていると思いますが、一方で、徹底されない受動喫煙の防止は健康被害を予防できないかもしれないという事も懸念されます。

改正健康増進法でも100㎡以下の飲食店は屋内禁煙が規制対象外になるなど徹底されていない部分が目につきます。まだまだこれから改善していく余地はある様に思いますが、皆さんはどのように思われますか?

                 禁煙促進チーム 生田卓也


by hiro-nishi-mc | 2019-11-29 16:37 | タバコラム
タバコラム115. 禁煙の日にひとこと(97)〜米国で電子タバコによる急性肺障害の報告!〜

 タバコラム115. 禁煙の日にひとこと(97)
  〜米国で電子タバコによる急性肺障害の報告!〜


 この1~2ヶ月くらいの間に米国で電子タバコ(e-cigaretteあるいはvapingと称されている)による急性肺障害の報道が続き、823日には初めて電子タバコ使用者に死者が出たと日本でも大きく報道されました。

 日本語の解説記事もネット上でいくつか公開されており、その中に105日発表の『「電子タバコ」パンデミック〜米国で何が起きているのか』と題する石田雅彦氏の記事が引用文献もたくさん紹介されてとても詳しく書かれています1)

 2019
103日時点で1,080例の肺損傷症例と18人の死亡があり、患者の約70%は男性、約80%は35歳未満です。さらに20191022日のCDCレポートでは電子タバコ関連肺障害は1,604例とさらに増加し、死者も34人に上っています2)
  

 New England Journal of Medicineという有名な学術誌からも、電子タバコ関連記事がいくつかフリーで公開されています3)。その中で『Pathology of vaping-associated lung injury』というタイトルの論文が目にとまりました。

 電子タバコを吸って呼吸器症状、両側肺の異常陰影が現われ、臨床的に電子タバコ関連肺障害(vaping-associated lung injury)が疑われた患者さんの肺組織の一部を生検された17人の患者さんの病理組織所見について書かれています。
 すべての症例で急性線維素性肺臓炎、びまん性肺胞障害、細気管支中心性で細気管支炎を伴った器質化肺炎といった、非特異的急性肺障害パターンを示していました。
 さらにすべての症例に泡沫細胞や肺胞上皮の空胞化が認められ、これが本症の診断の有用な手がかりになりそうだと書かれています。
 但し、これまで報告されているような急性好酸球性肺炎や外因性リポイド肺炎などの病理組織所見は今回の症例には見られていませんでした。

 ニコチンを含むリキッドを加熱して発生する蒸気を吸入するのが一般的な電子タバコですが、肺障害が起こった症例ではTHC(tetrahydro-cannabinol)というマリファナの成分の混在が多かったようですが、どの化学物質が原因で急性肺障害が起こったのか、まだ十分に特定できていない現状であるようです。

 日本ではタバコ葉を加熱する製品は扱えるが、ニコチン入りのリキッドの加熱は薬事法上扱えないということになっていて、米国の状況をそのまま日本に当てはめることはできませんが、電子タバコ使用時の吸引物質の中に肺に有害な化学物質が含まれている可能性があり、日本の電子タバコ愛用者にも注意を呼び掛けていく必要がありそうです。

タバコラム115. 禁煙の日にひとこと(97)〜米国で電子タバコによる急性肺障害の報告!〜_d0128520_11580805.jpg
図:「電子タバコ」パンデミック~米国で何が起きているかの記事より


参考インターネットサイトサイト


1)https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20191005-00145393/

2)https://www.cdc.gov/tobacco/basic_information/e-cigarettes/severe-lung-disease.html

3)https://www.nejm.org/vaping


禁煙促進チーム 立山義朗




by hiro-nishi-mc | 2019-10-29 12:05 | タバコラム
タバコラム 114. 禁煙の日にひとこと(96)~第13回日本禁煙学会学術総会が山形市で開催されます~


 タバコラム 114. 禁煙の日にひとこと(96)
   ~第13回日本禁煙学会学術総会が山形市で開催されます~


タバコラム 114. 禁煙の日にひとこと(96)~第13回日本禁煙学会学術総会が山形市で開催されます~_d0128520_12254416.jpg

 2019年度、令和になって最初の禁煙学会学術総会113日~4日に山形市にて開催されます。毎年楽しみにしている学会の一つなので今回も行きたいと思います。

 テーマは「脱ニコチン!依存症からの解放 ―環境・治療・教育 三位一体の禁煙推進―」です。

 

 今回もテーマに沿って、さまざまな禁煙推進、禁煙啓発のためのシンポジウム、特別セミナー、特別企画、教育講演、ランチョンセミナーなど興味をそそられる内容がもりだくさんとなっており、楽しみな限りです。

 私どもとしてはその中でも特に、今話題になっている『新型タバコ時代のタバコ対策大討論会』や来年の東京五輪開催に向けての『オリンピック前の受動喫煙対策』、『オンライン禁煙診療』や『ICTを活用した禁煙治療』、そして『精神科における禁煙推進』、『女性と喫煙』などに注目しています。

 さらに、産業医の生涯研修単位(実地2単位、専門2単位)、健康スポーツ医の研修単位2単位を取得できる講座も設けてあるのがとてもうれしいところです。

 そのほか、一般口演発表やポスター発表があり、禁煙専門指導者向けの禁煙治療セミナーも開催され、今回から新しく国家資格となった公認心理士を禁煙指導者もがんばれば目指すことができるようになり、禁煙学会内にも心理部会が結成されたことも心強いと感じています。

 まだ先と思っていましたが、10月に入るともう1ヶ月しかないのですね。時の流れが早いと感じることが多くなった今日この頃です。

学会ホームページ:https://site2.convention.co.jp/jstc2019/

図:学会ポスター

                 禁煙促進チーム 立山義朗

by hiro-nishi-mc | 2019-09-25 12:29 | タバコラム
タバコラム 113. 禁煙の日にひとこと(95)~この本をお薦めします!『本当のたばこの話をしよう、毒なのか薬なのか』


 タバコラム 113. 禁煙の日にひとこと(95)
  ~この本をお薦めします!『本当のたばこの話をしよう、毒なのか薬なのか(片野田耕太著、日本評論社)』~



 このコラムには、割と本の紹介が多いなあと思う方もいらっしゃるかと思いますが、今回も再び、今年の6月に発刊された本について紹介させていただきます。タバコのすべてについて網羅されており、喫煙者も非喫煙者もそしてタバコ問題に関心のある方もない方も一度手に取っていただき、タバコの何が問題なのかについて理解を深めるきっかけとなる良書です。
 

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 その本とは、国立がん研究センターがん統計・総合解析研究部長の片野田耕太先生による、本当のたばこの話をしようというタイトルの本です。

 数多くの参考文献や資料を巻末に掲げつつ、1部 たばこを吸う人の話(「喫煙者自身が被るタバコの害」)から話が始まり、2部 たばこを吸わない人の話(「受動喫煙の害」)と続き、3部 社会全体の話(「社会問題としてのタバコ対策の難しさ」)で締めくくられています。

最後の第3部は「タバコ対策の難しさ」と私は解釈しましたが、著者は一貫して、事実に基づく、客観的、科学的な主張を貫いていることがよくわかり、私は著者を全面的に支持しています。

詳細は実際に読んでいただければいいのですが、この本の中で1つだけ、私自身も意見を述べておきたいことがあります。

それは、新型タバコが「ハームリダクション」には当たらないという点です。

「ハームリダクション」とは麻薬患者に無料で使い捨ての注射器を提供することで、注射器の使い回しによる感染症が広がるリスクを少しでも減らすといったようなことを含め、有害性があることは認識しながらも、ほかの害を減らす行為を意味すると私は理解しています。

これをタバコに当てはめると、燃焼式と比べ、電子タバコや加熱式タバコといった、非燃焼式の新型タバコはCOの発生は皆無で、周囲への受動喫煙被害も減り、その他のタールなどの有害物質も少ないという意味で、どうしてもタバコをやめることができない重喫煙者に対するやむを得ない対策として、これも「ハームリダクション」という考え方があります。  

ところが、新型タバコ特有の有害物質が指摘されたり、新型タバコが決して禁煙を導くいい方法ではないことが次第にわかってきています。著者も述べているように、一部の有害物質が減ることが必ずしも健康被害の軽減にはつながるわけではないので、新型タバコはこれまでのタバコ同様規制対象とすべきであるということを今一度付け加えておきたいと思います。


        禁煙促進チーム 立山義朗

by hiro-nishi-mc | 2019-08-23 11:04 | タバコラム
タバコラム 112. 禁煙の日にひとこと(94)~電子タバコや加熱式タバコより禁煙を選択しよう!~


 タバコラム 112. 禁煙の日にひとこと(94)
   ~電子タバコや加熱式タバコより禁煙を選択しよう!~


*改正健康増進法が一部施行
 東京オリンピック・パラリンピックまであと約1年となってきましたが、この7月からは改正健康増進法が一部施行となり、全国各地で受動喫煙対策が本格的に進んでいくものと思われます。
 先日、JR玖波駅のホームに貼ってあったポスターを偶然にみかけましたが、JR西日本では広島シティネットワーク全駅でホームから喫煙所が撤去されるとのことでした。
 我々、病院の禁煙促進チームではここ最近、目立った活動が出来ていないのですが、世の中の方は我々の先を越してしまって受動喫煙防止に向かって進んでいるのだなといった印象です。当院の禁煙促進チームも遅れをとってしまってはならないとは思っています。

*電子タバコの普及と喫煙、禁煙
 さて、以前にも紹介した電子タバコや加熱式タバコの普及は目覚ましいものがあります。
 欧米で普及しているいわゆる電子タバコは、日本ではニコチン入りのリキッドを販売する事が薬事法で禁止されているため販売が規制されていますが、タバコ葉を燃焼させずに加熱してニコチンを吸入する加熱式タバコが広まってきています。国によって差があるとは思いますが、これらの新型タバコの健康への影響、禁煙への影響についての報告も増えてきました。
 英国のHajek.P先生らは、NEJMという医学雑誌に『電子タバコとニコチン補充療法の無作為試験』という論文で、英国の成人の参加者をニコチン補充療法の群と電子タバコを使用する群に割り付けて、1年後の禁煙達成率を比較したところ、ニコチン補充療法の群が9.9%であったのに比較して電子タバコの群は18%と禁煙成功率で上回ったと報告しています1)。
 一方で、米国のBerry.KM先生らはJAMAという医学雑誌に『米国の若者における電子タバコの使用とその後に紙巻タバコの喫煙を開始する事との関連』という論文を発表され、若年者が電子タバコを使用する事は後になって、紙巻タバコ喫煙開始に関連してくるという報告をしています2)。これらは、海外からの報告ですので、日本で普及してきている加熱式タバコにすぐに当てはめることはできないと思いますが、興味のある方は論文を読んでみてください。

*日本からの報告
 因みに日本からも『日本における電子タバコの使用と禁煙:禁煙法のクロス・セクショナル研究』という論文を国立がん研究センターの平野公康先生らが発表されていて、その研究によると、過去5年間に喫煙をしていた20~69才の参加者798名で禁煙方法と禁煙の達成との関係を解析したところ、電子タバコを使用した禁煙は禁煙の達成には負に関連をしたという結果が出た様です (図1) 3)。

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 この結果は英国での結果とは逆であり、電子タバコを用いて禁煙をする事は私たちとしてもやはりお勧めできません。

 電子タバコや加熱式タバコの普及は従来型の燃焼型タバコの喫煙にとって代わる新しい生活スタイルかもしれませんが、燃焼型タバコより害が少ないからいいではないか、ではなく、実際、通常の有害物質規制値よりはるかに高いままのものもあります。燃焼型タバコ中の有害物質量の値があまりにも高過ぎるのです。喫煙者本人と周囲の人たちの害をゼロにできる方法があるのに、そうしないというのは決して賢明な選択ではないと我々は考えます。

                禁煙促進チーム 生田卓也

参考文献
1)Hajek P et al.: A randomized trial of E-cigarettes versus nicotine-replacemnet therapy. N Engl J Med. 2019;380(7):629-637.

2)Berry KM et al.: Association of electronic cigarette use with subsequent initiation of tobacco cigarettes in US youths. JAMA Network Open. 2019; 2(2):e187794

3)Hirano T et al.: Electronic cigarette use and smoking abstinence in Japan: A cross-sectional study of quitting methods. Int J Environ Res Public Health. 2017;14(2);E202



by hiro-nishi-mc | 2019-07-19 15:34 | タバコラム
タバコラム 111. 禁煙の日にひとこと(93)~いよいよ7月1日より学校、病院などは改正健康増進法施行されます!~


 タバコラム 111. 禁煙の日にひとこと(93)
  ~いよいよ71日より学校、病院などは改正健康増進法施行されます!~



 201966日、531日の世界禁煙デーの時期に合わせた広島県医師会が中心となって開催している、毎年恒例の20回たばこと健康・広島フォーラムに参加しました。

 県の健康福祉局長の田中 剛先生のご講演を聞いて、いよいよ71日より学校、病院などで改正健康増進法が施行されることに改めて気がつきました。全面施行が202041日からとなりますが、その前段階としてまず、子どもと患者さんを受動喫煙から守りましょう!ということで早めに施行されたと理解しています。


 学校や病院などは第一種施設では敷地内禁煙であり、タバコに対して最も厳しい場所と決められたわけですが、屋外で受動喫煙を防止するために必要な措置が取られていさえすれば喫煙所の設置が可能という、抜け道のあるところがとても残念に思うところです。しかしながら、田中先生も講演の中で言われていたように、例え抜け道のある法律であっても、法律という形で敷地内禁煙が明記されたことは一歩前進と評価してよいかなと私も思っています。

 私たちの病院施設も禁煙促進チームとしては今一度、喫煙対策が大丈夫であるか、院内巡視などして確かめる必要があるかと思われます。


 喫煙目的施設や屋外、家庭などはとりあえず別にして、第二種公共施設としては工場、ホテル、飲食店、交通機関などがあげられていますが、原則屋内禁煙であるものの、喫煙専用施設などの設置は可能となっています。そして客席面積100㎡以下の小さな個人経営の飲食店では喫煙可能施設であると明記すれば喫煙可能ともなりました。せっかく健康増進法が改正されるというのに、何ともお粗末で規制がひどく弱められた形になってしまったことにとても残念に思っているところです。


 しかしながら、喫煙可能な飲食店などの施設には立ち入らず、『タバコを吸わない社会が当たり前』という世論を形づくっていけるよう、引き続きタバコの有害性や危険性を世の中に訴えていくことが重要かと思っています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおいて、受動喫煙対策の面で日本国が国際社会の中で恥をかくことがないように、国民の一人一人の自覚こそが最も大切なことかと思っています。

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写真(改正健康増進法の施行期日について)
厚労省HPより抜粋

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/AA10K-0000189195.html

          禁煙促進チーム 立山 義朗


by hiro-nishi-mc | 2019-07-01 19:21 | タバコラム
タバコラム 110. 禁煙の日にひとこと(92)~世界禁煙デー2019.5.31~

タバコラム 110. 禁煙の日にひとこと(92)
~世界禁煙デー2019.5.31


201951日に令和に変わって最初のタバコラムです。

531日は世界禁煙デー。

毎年テーマ(スローガン)が掲げられますが、2019年はTobacco and Lung Health(タバコと肺の健康)」

昨年の心臓に続き、今度は肺を守ろう!という感じでしょうか。

ご存じのようにどちらも生死にかかわる重要な臓器です。

タバコ関連の肺の病気と言えば、肺がんを始め、COPD、気管支喘息、ランゲルハンス細胞組織球症、特発性肺線維症、急性好酸球性肺炎など、多くの病気が知られています。

肺は私たちが生きるために欠かせない、血液を通して全身の細胞に酸素を供給するという重要な任務を心臓の協力のもとで行っています。

世界禁煙デーに合わせて、心臓と肺の両方にダメージを与えるタバコについて改めて対策を考える日にしたいものです。

https://www.ncc.go.jp/jp/cis/divisions/tobacco_policy/project/wntd/index.html

https://www.who.int/news-room/events/detail/2019/05/31/default-calendar/world-no-tobacco-day


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ちょうど玖波駅で目にしたのが、2019年(令和元年)531日より新幹線のホームを除く、在来線全駅で灰皿を撤去し、全面禁煙とするポスター。

JR西日本も頑張っています。みんなで応援しましょう!

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190513-00000140-impress-sci


禁煙促進チーム 立山 義朗


by hiro-nishi-mc | 2019-05-21 11:50 | タバコラム