第6回 画像による病理診断クイズ解答
アスベスト小体(石綿小体、asbestos body(AB)、
厳密には含鉄小体 ferruginous body)
画像1
喀痰細胞診標本中に偶然観察されたAB
(ギムザ変法、対物×100)
画像2
画像1とは別症例の組織切片上で観察されたAB(HE染色、対物×40)
画像3
画像2と同じ症例の組織切片上で観察されたAB。HE染色で褐色の鉄成分はベルリン青染色にて青く染色されます。(ベルリン青染色、対物×40)
画像4
上記とは別症例の肺を溶解後にろ過して観察されたAB(対物×40)
ABはアスベスト繊維に鉄を含むタンパクが表面を被覆して形成されます。ABには画像1のようなダンベル状あるいは画像2、3、4のような串団子状を示します。
ABは次亜塩素酸ナトリウムなどで肺組織を溶解、抽出し、フィルター上にろ過して顕微鏡下で観察すると、組織切片上で観察されなくてもほとんど全例で画像4のようなABが観察できます。ABは胸膜プラーク pleural plaque(胸膜肥厚斑)とともに、アスベスト曝露の指標(証拠)とされており、1g乾燥肺当たりのAB数はアスベスト曝露程度の良い目安(下記)とされています。
1g乾燥肺当たりABs
<1,000 ABs:環境曝露
1,000~5,000 ABs:職業的曝露の疑いあり
>5,000 ABs:職業的曝露
アスベストによる健康障害については国の救済制度がありますので、環境保全機構ホームページなどを参照されるといいでしょう。
http://www.erca.go.jp/asbestos/index.html
立山義朗