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タバコラム89.禁煙の日にひとこと(71)~『子宮頸癌の若年化と女性の喫煙』についての論考から~
タバコラム89.禁煙の日にひとこと(71)
~『子宮頸癌の若年化と女性の喫煙』についての論考から~ 長年、子宮頸癌の診療にあたってこられた西村隆一郎先生より、
『子宮頸癌の若年化と女性の喫煙』と題する論文を読ませていただきました(日婦腫瘍会誌 2014;32(4):739-749)。
子宮頸癌の罹患率は、1980年には更年期以降の女性が主体を占めていましたが、2005年になると25~44才の女性が主体を占めてきました(左図2)。
子宮頸癌による死亡率も下げ止まり、むしろ増加傾向すら示しています(右図8)。
一方、喫煙率はと言うと、男性はどの年代も減少の一途をたどっているのに対し、女性では1980年頃までは喫煙女性の多い年代は50才以上であったのが、1990年以降には20~40才代女性が大半となり、2002年頃まで増加し続けていました(左図4)。
一方、米国における喫煙(あるいはタバコ消費量)と肺癌死亡率との関係では20~30年のタイムラグで減少が見られてきたことは有名ですが、日本においても1968年にタバコ消費量がピークとなり漸減するに従って、1998年に肺癌死亡率がピークとなってからは減少に転じていることから、両者の関係には約30年のタイムラグがあると考えられています。
そうすると、喫煙と子宮頸癌の場合、10~20年という、肺癌よりも短いタイムラグで死亡率あるいは罹患率と相関しているのではないかと考えられています。
さらに、子宮頸癌はHPV感染が原因と考えられていますが、喫煙すると、まず、HPVに感染しやすくなり、次いで軽度異形成から高度異形成や上皮内癌に進展しやすくもなり、さらに上皮内癌から浸潤癌へも進展しやすくなるとのデータも知られています。
日本よりも女性の喫煙率が高いとされる韓国で子宮頸癌の死亡率が2005年頃まで急増している(上図8)ことをみても若年女性の禁煙キャンペーンの必要性を物語っています。
受動喫煙についても能動喫煙ほどではないにしろ、影響があることはまちがいありません。また、閉経期前の乳癌罹患率や死亡率の増加についても喫煙の影響があるとされており、性成熟期女性が子宮頸癌で死亡することを防ぐことは少子化対策において重要なポイントであることはまちがいありません。
(禁煙促進チーム 立山 義朗)