第7回画像による病理診断クイズ解答
病変(1):胃の印環細胞癌(signet-ring cell carcinoma)
病変(2):胃粘膜の黄色腫(xanthoma)
写真1:
切除胃肉眼写真、病変(1)は早期胃癌IIC病変の一部より、病変(2)は黄色調の平坦な小結節である黄色腫より切片作成。
写真2:
病変1 粘膜内で集簇性に増殖する印環細胞癌。低分化腺癌の一型。(HE染色対物×40)
写真3:
病変2 粘膜内で泡沫状胞体を有するマクロファージの集簇巣。個々の細胞を黄色腫細胞と言う。(HE染色対物×40)
病変(1)、(2)は肉眼像を見れば、一目瞭然であるが、組織像は若干類似しているので注意が必要です。
さらに、印環細胞癌は生検診断時には見落としにも注意が必要となります。例えば、写真4は潰瘍近傍の肉芽組織様ですが、上皮性粘液などが赤紫色に陽性となるPAS染色を行うと印環細胞癌の胞体が鮮明に陽性となります。
写真4:
別症例の胃生検組織像。潰瘍近傍の肉芽組織様に見える。(HE染色対物×40)
写真5:
写真4と同じ切片。(PAS染色対物×40)
なお、印環細胞癌は上皮性なのでサイトケラチン(AE1/AE3)陽性、CD68陰性ですが、黄色腫はAE1/AE3陰性、マクロファージのマーカーCD68陽性です。
写真6:
印環細胞癌(AE1/AE3の免疫染色対物×40)
写真7:
印環細胞癌(CD68の免疫染色対物×40)
写真8:
黄色腫(AE1/AE3の免疫染色対物×40)
写真9:
黄色腫(CD68の免疫染色対物×40)
又、黄色腫細胞は様々な疾患で出現します。例えば動脈粥状硬化巣、高脂血症に伴なうことのある眼瞼黄色腫、化学療法や放射線療法後の腫瘍組織などです。写真10は眼瞼黄色腫の組織像です。
写真10:
眼瞼黄色腫(xanthelasma)(HE染色対物×20)
立山義朗